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仙台地方裁判所 昭和24年(行)58号 判決

原告 黒田金次郎

被告 宮城県農地委員会

一、主  文

原告の請求はこれを棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

二、事  実

原告訴訟代理人は被告が昭和二十四年八月二十五日訴外玉手ひでの訴願に対してなした裁決はこれを取消す、訴訟費用は被告の負担とするとの判決を求め、その請求の原因として、訴外櫻村農地委員会は、昭和二十二年二月十八日原告のなした買收の申請により昭和二十四年六月十五日頃訴外玉手ひで所有の宮城県伊具郡櫻村大字佐倉字小山東百九十九番地の一、宅地七十八坪のうち五十一坪及び右訴外人所有の右宅地上所在の木造平家建居宅一棟建坪十八坪のうち西側道路に面した店舖の部分六坪を除き、その他の部分十二坪について自作農創設特別措置法(以下自創法と略称する)第十五条による買收計画を定め、その頃これを公告した。そして右訴外村農地委員会は同年六月二十五日右訴外人から異議の申立を受け、同月二十八日却下の決定をなし、同年七月八日その決定書を送達したが、右訴外人が更に同月八日被告に訴願するや、被告は同年八月二十五日本件家屋について原告は現在賃借権を有せず、且つ本件家屋はその構造上これを前記買收計画に定めたように分割して買收することができないし、又本件宅地も本件家屋が買收できない以上これと切り離して別個に買收するわけにはゆかないとして右訴願を認容し、本件買收計画を取消すべき旨の裁決をなし、原告は同年九月五日右裁決書の謄本の送達を受けた。

しかしながら、本件家屋は訴外玉手ひでからその現住する家屋とともに昭和八年一月一日原告において賃料月五円の約定で期限の定めなくこれを借受け、昭和二十年になつて右玉手ひでにその現住する家屋を明渡し、改めて同人から本件家屋を從前通りの約定で借受けたものである。

又本件家屋は、前記買收計画から除外された店舖の部分六坪と買收計画に編入されたその他の部分十二坪とはその構造等を異にしているから、これを本件買收計画に定めたように分割して買收することが可能である。

以上の通りであつて、訴外櫻村農地委員会が本件家屋竝びに宅地について定めた買收計画は正当であり、從つて訴外玉手ひでの訴願を認容し、本件買收計画を取消すべきものとした被告の前記裁決は違法であるから、その取消を求めるため本訴請求に及んだ次第であると述べた。(立証省略)

被告訴訟代理人は主文と同旨の判決を求め、請求原因事実のうち訴外櫻村農地委員会が原告の買收申請により、本件買收計画を定めてから、被告の裁決書の謄本が原告に送達されるまでの経過が原告主張の通りであること、訴外玉手ひでの先代玉手彦五郎が原告主張の日原告に対し、本件家屋をその主張の家屋とともに賃料月五円の約定で賃貸したこと、及び訴外玉手ひでが昭和二十年中に原告からその主張の家屋の明渡を受けたことはいずれもこれを認めるが、その他の事実は総てこれを否認する。右賃貸借の期間は十年の約定であつたから、右期間の経過とともに右賃貸借は終了したと答えた。(立証省略)

三、理  由

訴外櫻村農地委員会が昭和二十二年二月十八日原告のなした買收の申請により昭和二十四年六月十五日頃訴外玉手ひで所有の宮城県伊具郡櫻村大字佐倉字小山東百九十九番地の一宅地七十八坪のうち五十一坪及び右訴外人所有の右宅地上所在の木造平家建居宅一棟建坪十八坪のうち西側道路に面した店舖の部分六坪を除きその他の部分十二坪について自創法第十五条による買收計画を定め、その頃これを公告したこと、右訴外村農地委員会が同年六月二十五日右訴外人から異議申立を受け、同月二十八日却下の決定をなし、同年七月八日その決定書を送達したこと、しかるに被告が同日右訴外人から訴願の申立を受け、本件家屋について原告は現に賃借権を有せず、かつ本件家屋はこれをその構造上これを前記買收計画のいうように分割して買收することができないし、又本件宅地も本件家屋の買收が許されない以上これを本件家屋と切り離して別個に買收するわけにはゆかないとして同年八月二十五日右訴願を認容し、本件買收計画を取消すべき旨の裁決をなし、原告が同年九月五日右裁決書の謄本の送達を受けたことは当事者間に爭のないところである。

よつて先ず原告が本件家屋について現在賃借権を有するかどうかの点について按ずるに、原告が昭和八年一月一日訴外玉手ひでから同人の現住する家屋とともに本件家屋を賃料月五円の約定でこれを借受けたことは当事者間に爭がなく、証人玉手誠、玉手ひでの各証言を綜合すれば前記賃貸借の期間は十年の約定であつたことが認められる。右認定に反する原告本人訊問の結果は信用できない。

次に被告は右賃貸借は前記十年の期間の経過によつて既に終了したと主張するけれども、昭和十六年三月十日以降右賃貸借について借家法が適用されることになつたから、訴外玉手ひでから原告に対し、同法第二条第一項所定の通知をなしたことについてこれを肯認するに足る証拠のない以上、右賃貸借は昭和十八年一月一日更新されて昭和二十七年十二月末日まで存続するものといわなければならない。

次に昭和二十年になつて原告が訴外玉手ひでの現住する家屋を明渡したことは当事者間に爭がないので、右家屋に関する限り右賃貸借は合意の上解除されたことを窺うに足り、しかして証人玉手誠の証言によれば玉手ひではこれと同時に本件家屋に対する賃貸借契約をも解除し、改めて本件家屋を賃料月五円の約定で期間の定めなく一時使用の目的で賃貸することゝなしたという趣旨の陳述があるけれども、右陳述中旧賃貸借解除後の新賃貸借が一時使用の目的であつたという趣旨の部分は信用できないし、右二度目の賃貸借が終了したことについては之を認めるに足る証拠がないから、右証言は原告において本件家屋の賃借権を有することについては何等消長を及ぼさない。

しかし乍ら次に本件家屋が果して本件家屋買收計画に定められたように分割買收する(証人今内慥爾の証言及び原告本人訊問の結果によれば原告の申請もまた本件家屋買收計画の通りであつたことが認められる)ことができるかどうかの点について按ずるに、檢証の結果によれば本件買收計画に編入された部分十二坪は平家建で、買收計画から除外された店舖の部分六坪は二階建であること、その間一部は通路として開けてあるが、大部分は土壁を以て仕切られていること、及び買收計画に編入された前記十二坪の部分には六疊、八疊各一間の外板の間、縁側、土間、炊事場等があつて前記店舖の部分と切り雜してもこれを独立に住居の用に供しうることが明らかで、他方買收計画から除外された店舖の部分六坪は、証人黒田金一の証言竝びに檢証の結果によれば、階下の大部分が板の間であつて、現在原告の長男黒田金一が階下全部を使用して理髪業を営んでおり、二階はその一部に疊を敷いてここに同人とその家族が寢起きし、他の部分は板敷のまゝ物置になつていることが認められるから、本件家屋は之を二戸に区分しうるように思われるけれども、檢証の結果によれば本來全体を一戸として建築したものであるから、右六坪の部分は十二坪の部分の附属として初めてその存在意義をもつものでもし之を十二坪の部分と切り離しその所有者を異にした場合を考えてみると、右六坪の部分丈ではその二階の部分を加えてもなお、狹隘にすぎる許りでなく、施設の上からいつても不完全であるため到底一戸独立の家屋としての存在を全うすることができないことが容易に窺われるのであつてかような建物の一部買收は許されないものというべきである。

更に前記のように本件建物の一部買收が許されない以上、その敷地たる宅地だけを建物と分離して別個にこれを買收することはこれまた自創法第十五条の趣旨でないことが明らかであるから、本件宅地の買收もまた從つて許されないものといわなければならない。

以上の通りであつて、訴外玉手ひでの訴願を認容し、訴外櫻村農地委員会が定めた本件買收計画を取消さなければならないとした被告の前記裁決は結局正当であるから、その取消を求める原告の本訴請求には理由がない。

よつてこれを棄却し、訴訟費用の負担について民事訴訟法第八十九条を適用して主文の通り判決する次第である。

(裁判官 松尾巖 伊藤正彦 片桐英才)

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